その最後の仕上げとは、今までの体験の中で欠けていた通信販売である。
私は通販10社のスーパーバイザーとしてその裏側を知ることができた。
スーパーバイザーとは、ディレクターに指示するディレクターのことである。
例えばIE、A、JC、UC、N、Z、O、N、B、S等々を対象に通販事業用の商品を企画して製品化し、売るしかけをセットし提案することである。
しかけというのはストーリーである。
あるタイプの人をイメージして、総合的にその人に合う商品をコーディネートする。
例えばイタリアっぽいスーツを着た若い男性が持つのはこんな手帳で、こういう時計をして、こういうネクタイを合わせる、とトータルなイメージを作り上げる。
そうすれば、以前は時計1個しか売れなかったものが、一気に何アイテムも売れる可能性が拡大する。
しかし、通販にも大きな問題点があり、私自身は通販をほとんど利用しない。
それは原価率の問題があるからである。
通販では現状のレスポンス率からすると、原価率は3掛け以下におさめないと収支が成り立たない場合があり、つらいところである(例外もあるとは思うが)。
仮に適正原価を5掛けと考えると、この差は一体、どこから生じるのか。
通販購入者の不満で最も多いのは「パンフレットと実物があまりに違う」ということである。
これは原価が安い商品を、パンフレットで、より素敵に見せることによって高く売らざるを得ない理由があるからだ。
現在、DMのレスポンス率は平均1%以下が珍しくない。
かつては受注率3%で計算していたが、今では大幅にダウンしているので、原価率を下げないことには、膨大なパンフレット作成料が回収できないことになる。
パンフレットが命なので、パンフレットにはお金をかける。
もともと何を着ても似合ってしまうような美人外人モデルを使い、商品が立派に見えるように最高の照明を工夫する。
モデルには、服の仕立てを極力最高に見せるために、しわが目立たないようなポーズをとらせる。
そして10万枚、20万枚と印刷する。
店頭なら原価5万円のスーツを10万円で売れるのに、最低のレスポンス率を計算したうえでの通販商品としてなら同じ10万円のスーツでも残念ながら原価3万円の質のものを売っている、いや売らざるを得ないことになってしまうのである。
消費者は、現物との落差が大きければ大きいほどがっかりする。
そのままではもう通販を利用しないようになるだろう。
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